緑茶、烏龍茶、紅茶の淹れ方
〜高木園のセミナーより〜

 
 だれかとお茶を飲もうとするのはそのひとと仲良くなりたいということですし、ひとりでお茶を飲むのは、自分と向かい合うこと。自分を振り返り、いたわり、ねぎらい、はげますことだ。お茶の時間にはそんな素敵なちからがひそんでいるようにおもいます。
 日本茶、烏龍茶、紅茶のいれかたで、いちばんたいせつなことは、いれかたよりも、そういった、のどの渇きだけでない、皆さんの心を充たす、お茶のそんな働きだと思います。ストレスフルな昨今、お茶の時間くらいはリラックスして、笑顔で過ごしていただきたい。生活にメリハリをつけたり、次への活力の源としたり。目的は人によってさまざまですが、ティーライフの充実にお役に立てたらと思います。
 
 
 
1.緑茶
 
 ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、私たちがふだんお茶とよんでいる緑茶と紅茶、そして烏龍茶はもともとは同じ木です。ツバキ科の一種で正式名をカメリア・シネンシスといいます。農家のおばさんが摘んできたお茶の葉は、緑色をしていますが、それを放っておくと、黄色くなり、やがて茶色になっていく。緑茶が烏龍茶になり、紅茶へと変わっていく過程です。
 
 何がおこったかというと、お茶の葉に含まれる酸化酵素というものが、空気中の酸素と結びついて酸化(よく発酵と言われますが、正確には酸化です)していくわけです。皮を剥いたりんごを、たべずにおくとだんだん色が変わって黒ずんでくるでしょう。あれといっしょです。
 
 完全に酸化したのが紅茶。途中で酸化をとめたのが烏龍茶、まったく酸化していないのが緑茶です。蒸気で蒸して酸化酵素の働きをとめるのが日本の緑茶のつくりかたなんですが、烏龍茶や紅茶に比べれば、傷みやすいし生にちかい。それだけ、より多く自然の恵みを残しているとも言えるでしょう。ガンにかかりにくいとか、動脈硬化をおさえるとか、虫歯予防とか、そのほかにも緑茶(お茶)にはさまざまな健康効果があるのもそのためだとおもいます。
 
 実際にお茶を入れてみます。3人分くらいがちょうどおいしく入りやすい(料理なんかもそうでしょうけど、1人前をおいしく淹れるのはむつかしいのです)。
まず最初にポットから茶碗に人数分の(3人分の)お湯を注ぎます。7分目くらいでいいです。こうすることには実は理由が3つあります。
 
お湯を冷ます。茶碗を温める。そしてお茶の量が量れる。この3つです。

 
緑茶の淹れ方
 

 どうしてお湯を冷ますんですか?おいしくなるからですよね。じゃあお湯を冷ますとなぜおいしくなるんでしょう?これはお茶の味成分の働きがお湯の温度で変わってくるから。お茶の味を決める代表的な3つの成分とは何でしょうか?わかりにくかったら、皆さんがお茶を飲んだときに、どんなことばでその味を説明しますか?しょっぱいとか辛いとか。苦い、渋い、甘い、うまいとかでしょうか。
 
 この苦味が珈琲なんかにたくさんはいっているカフェインです。渋味がこのごろテレビによく登場するカテキン(タンニンともいう)。甘味・うま味はアミノ酸です。この3つの成分はお湯の温度によって働き方が違う。渋味のカテキンと苦味のカフェインはお湯が熱いほどよく溶け出す。ですからお湯が熱いほど渋く苦くなる。それにたいして甘味・うまみ成分のアミノ酸は、お湯の温度にあまり関係なくお湯が熱くても、ぬるくても、水であってもおんなじように働きます。
 
 それで3つの成分がバランス良く働く温度。渋味・苦味・あまみがほどよく調った味になるのは、だいたい70℃から80℃といわれる。それでお湯を冷ますわけです。でもね、そんなこといったって、俺はやけどするくらい熱いお茶をふうふう言いながらのみたいとか、とにかく渋いお茶が好きだ、というかたもいらっしゃるでしょう。そういうひとは、熱湯でお茶を淹れたらいいと思う。お茶はあくまで嗜好品なのだから。ただ温度で味が変わってくることを知っていることは大切ですし、より多くの方はこのほうがおいしいと感じるはずです。


 次に急須にお茶の葉をいれます。あくまで目安ですが、1人前2g。だから3人なら6g。この茶さじですりきりくらい。そこへ湯呑みに入れてほどよく冷めたお湯を注ぎ、30秒くらい待つ。お茶の葉がお湯の中でゆるやかに開いていくのを待ちます。
 
 お茶の葉というのは、作る過程で蒸したあと、揉んで揉んで、乾燥させて、まるでぞうきんを絞ったようによられた状態になっています。それが開いていきながら、お茶の成分がお湯に溶け出していく。30秒と言ったけど、待ち時間はお茶の葉の細かさによって違う(これは紅茶なんかもいっしょ)。粉茶や深蒸し茶のように葉っぱが細かいと、成分が溶け出すのが速いので短い時間で。反対に玉露や紅茶のダージリンのように粉のない大きな葉(オレンジペコー)は、時間がかかります。
 

 では、急須から茶碗にお茶を注ぎます。3つの茶碗のお茶が同じ濃さになるように、少しずつ注いでいく。このやり方を回し注ぎといいます。この段階で色がまだ出ていないなあ、と思ったら待ち時間が短かったので、ゆっくりと注ぐ。反対に濃かったら、十分成分が出ているので、手早く注ぎます。急須の中では、こうしている間もお茶の成分がお湯に溶け出している、それでこんな具合に調節するのです。
 
 それと最後の一滴まで、よく注ぎきって下さい。この濃いところがおいしいですし、注ぎきることで二煎目(二回目)がおいしくなります。
 

 二煎目を淹れるときは、お湯が80℃くらいになっているポットならそのままでもいいんだけど、そうでなかったら、少し冷ましたい。でも茶碗はつかってしまっている。それで湯冷ましを使います。湯冷ましで冷ましたら急須にお湯を入れて、待たずに注ぐ(お茶の葉は、もうすでに開いているから)。三煎目は、ポットから直接でもいい。だんだんお茶の味が変わってきているでしょう。それはお茶の味成分が溶け出すスピードと関係があります。
 
 甘味のアミノ酸と苦味のカフェインはお湯に溶け出すスピードが速い。それに対して渋味のカテキンは、ゆっくりだらだらといつまでも出てきます。だから、甘味と苦味は(ちゃんと淹れれば)一煎目でほどんど出ちゃう。二煎目、三煎目は渋味のカテキンが中心なので、それほど冷まさなくてもいいわけです。
 

 ひとから聞いた話ですけど、豊臣秀吉が織田信長に気に入られたきっかけは、秀吉が信長に淹れてあげたお茶がおいしかったからだそうです。最初の一杯はぬるめで甘い。二杯目は少し熱くちょっと渋い。最後の一杯はとても熱くてとても渋い。秀吉がお茶の成分と温度の理屈をわかっていたのかどうかは知りませんけど、なんと気が利くやつじゃ、となったとか。
 
 ちなみに最近は渋味が敬遠され勝ちですが、お茶の場合、この渋味があるから飲んだ後清涼感、さわやかな感じになるのです。
 

 こんな具合に、ていねいにちゃんと淹れるとだいたい3回くらいで、いいところはでてしまう。その後のお茶を出がらしというんですね。だれだれさんちに言ったらまるで出がらしのようなお茶が出てきた、なんていわれるやつです。その茶殻にポン酢醤油をかけておひたしのようにして召し上がることもできます。
 
 お茶を淹れて、渋すぎたなあと思ったら、それはお湯が熱かったか、葉っぱが多すぎたか、待ち時間が長すぎたか。その3つのうちのどれかです。そのことをいつも意識しながら淹れていると、かならず上手に淹れられるようになります。料理もそうでしょうけど、お茶がおいしくいれられると、女の人の株があがると思いますよ。
 

 次に、冷茶について。冷茶はアイスティー(紅茶)もアイス珈琲も淹れ方はいっしょです。濃いめにきちんとホットで淹れたお茶や珈琲を氷で一気に冷やす。お茶の場合、どうせ冷やされるのだからお湯を冷まさなくてもいいんじゃないかと思うかも知れませんが、そうすると苦味と渋味のつよい冷茶になってしまう。ホットの段階で味が決まってくるからです。最初から水で出す方法もあるけれど、これだと香りが出にくいという欠点があります。
 
 
2.烏龍茶
 
 最近の中国は経済発展が著しいので、どうかわかりませんが、一昔前の中国の人は、朝出勤するときに、ラオパンペイという水筒へお茶の葉とお湯を入れ、それを持ち歩いて飲んでいた。お湯がなくなると、なんでもいろんなところでもらえるらしく、お湯を補給しては飲む。そうして朝淹れたお茶っ葉を一日中使い切るそうです。もちろん何度もお湯を足せば、少しずつお茶は薄くなっていくけれど、香りも味もちゃんとする。これは、烏龍茶というお茶の作り方にその秘密があるのです。
 
 烏龍茶の葉をご覧頂くと緑茶とも紅茶ともだいぶ違いますね。ごつごつごろごろした葉っぱです。緑茶は多少粉っぽいけど、よく寄れています。紅茶は、とても細かい。これはBOPといって大きな葉っぱであるOP(オレンジペコー)を刻んでお湯に成分が溶け出しやすくしたものです。Bはbreak(こわす)の過去分詞形でbroken、こわされたと言う意味です。
 
 緑茶の葉が細かいのは、上記のように蒸した後でなんども揉む。これも紅茶のBOPと同じで、お湯に溶け出しやすくするためです。それにくらべて、いかにもほったらかしでなんにも手を加えていないようにさえ見える烏龍茶は、実際あんまり手を加えていない。だからお茶の葉の組織がこわれないし、ストレスもない。それでゆっくりと時間をかけて溶け出すわけです。そのため、烏龍茶は、急須に葉とお湯を入れたら1分半くらい待つ。二煎目を飲む時、緑茶なら待たずにさっさと注ぐところを、最初と同じようにまた1分半待つ。こうして少なくとも5、6回は楽しめます。
 
 まず、お湯で急須(茶壺)と茶海(中国茶・台湾茶用の道具。茶壷や蓋碗でいれる際にお茶の味を均一化するために使う、ピッチャーの役割をさせるもの)をあたためます。そのお湯で今度は茶碗を温める。温めたお湯を緑茶の時は、捨てないでぬるめのお湯として使いましたよね。それを烏龍茶や紅茶、珈琲では使わない。緑茶以外はすべて熱湯で淹れる。ここ大事なポイントです。
 
 お茶の葉を少し多めに7gくらい入れます。そこへ、熱湯を注ぎ、溢れるくらいいれてふたをする。そして
1分半ほど待ちます。
 烏龍茶、紅茶、珈琲に共通する淹れ方のポイントは、お茶の葉がお湯の中で開いていく間、そのお湯(急須や紅茶ポットの中の)の温度が下がらないようにすることです。このために烏龍茶だとこの上からお湯をかけたり、紅茶ならティーコージをかぶせたりするわけです。

 
烏龍茶の淹れ方
 

 お茶の葉が開いたら、このまま茶碗に注いでもいいのですが、茶海とよばれる容れ物に急須を縦にして載せると最後まで注ぐことが出来ます。それを茶碗にうつします。そしたらですね、遊びですけど、その茶碗にもうひとつのつかっていない茶碗をかぶせてひっくりかえしてください。で、からになった茶碗を両手のひらで縁を抑えて、くるくるまわしながら、そのかおりを嗅いでみる。あまあいミルクのような香りがします。これが黄金桂の香り。本当は聞香杯という専用の茶碗を使うんですけどね。
 
ところで烏龍茶は(紅茶もそうかもしれないけど)、味よりも香りを重視した飲み物だとおもいます。反対に日本の緑茶は、香りよりも味を優先した作り方と言えます。
 
 
 
3.紅茶
 
 紅茶を淹れるときにたいせつなことは、何よりも汲みたて沸かし立ての熱湯を使う。このことが一番大事です。どうして汲みたてかというと、紅茶の香りを出すために酸素が必要だから。くみ置きした水やポット(魔法瓶)のお湯では酸素が少なくなっている。それとお湯が熱くないと、紅茶の成分が溶け出さない。それで酸素を含んだ、蛇口から汲んだばかりの水を、十円玉くらいの泡ができるまで沸騰させたのを紅茶の葉っぱの入ったポットへ勢いよく注ぎます。
 
 紅茶ポットやカップは烏龍茶の時と同様、前もってあたためておきます。ポットが冷たいとせっかく熱湯を注いでもその熱をこのポットが吸収してしまうから。ポットに入れる葉の量は、緑茶の場合とおなじように、葉が細かければ少なくて良いし、反対に粉のない大きな葉っぱならたくさん使います。で、セイロンブレンドのBOPタイプなら一人前2gくらい。これより大きなダージリンなんかのOP(オレンジペコー)で3g、反対にBOPより細かいBBOPファニングスなら1.5gといったところ。今回は高木園で取り扱っている、セイロンブレンドの「ラブリーアフタヌーン」を使用してお話しします。
 
 待ち時間(蒸らし時間ともいう)は、OPなら5分、BOPなら3分と、こまかくなるほど溶け出すのも速いので短くなります。でも、こういう何グラムで何分というのもそう厳密に考えて砂時計ではかったりするよりも、みなさんがお茶を淹れるときに、お湯の温度やグラム数をいちいち計らないように、勘でいいと思う。そして濃すぎたらお湯を足してもよいし、ミルクで割っても良いのです。そうして失敗しながらちょうどよい感覚をからだで覚えていくことが一番だと思います。
 
 
紅茶の淹れ方1


 お湯を注いだらポットにティーコージ(お茶帽子)をかぶせます。こうすると2時間くらい冷めない。ティーコージがなかったらタオルを巻いても結構。保温できればいいんだから。
 
 さて、3分経過したら、茶漉しを使って紅茶を注いでいきます。香りがでてきますが、メンソールのような香りがクオリティシーズンといっていちばん品質が良いときのウバの香りです。インドのダージリン、中国のキーマンとともに世界三大紅茶といわれています。
 
 それから、飲み口もソフトで渋味が少ないでしょう。これは同じセイロンティのディンブラの持ち味です。このラブリーアフタヌーンという紅茶は、香り高いウバとまろやかで女性的なディンブラのブレンド。ブレンドというのは1+1=2ではなくて、お互いのいいとこを伸ばし合い、良くないところを補い合うものです。ウバは香りが素晴らしいけどとても渋い。ディンブラはやらわかい味が特徴だけど、香りもおとなしい。それをブレンドしたら、香りもあってまろやかなお茶が出来ました。

 
紅茶の淹れ方2


 ところでこうしてお話ししている間にも、ポットの中のお茶はどんどん成分を出して濃くなっています。水色も濃い茶色に変わっている。この濃い紅茶にミルクを加えて飲むのがミルクティ(煮出してつくるチャイに対してイングリッシュミルクティともいわれる)。ミルクは珈琲用のクリームではなく、牛乳です。ミルクジャグなどの入れ物をお湯で温めたものに、牛乳を入れて人肌くらいにしておくのを使います。
 
 いちどにたくさん淹れた紅茶を、最初は、ストレートで。濃くなった二杯目をミルクティとしてたのしむ。これはやってみるとなかなかおつなもので、わたしも毎朝楽しんでいます。
 
 共通点はあるものの、淹れ方を通じて異なる3種類のお茶の楽しみ方が伝われば幸いです。また、このサイトを通じてティーライフの充実のお手伝いができればうれしく思います。